2016/7/1串間市で四万十ドラマ代表の畔地氏による講演が開かれた。「四万十のあしもとにのこるもの」と題し、これまでの20年以上に及ぶ地域ビジネスへの取り組み(地域産品の企画・販売の成功/失敗、百貨店とのタイアップ企画etc..)が共有された。「今後の地方都市はどこへ向かうべきか?」一つの道を示してくれる内容だったので、備忘録として本記事にまとめておきます。
目次
四万十ドラマとは?
株式会社四万十ドラマは高知県四万十市に拠点を置く地域商社。平成6年第3セクター機関としてスタート。地域プロデューサー(常勤1名)として全国的に公募し採用されたのが畔地氏。
平成17年に完全民営化され、直近の売り上げは約7.7億円(道の駅の販売額1.7億円、地域外への販売額は5億円が主だった売上)、30〜35名規模の地域雇用も生んでいる。
四万十ドラマの3つの方針
①地域密着による地域資源の展開
②環境循環ビジネスの構築
③住民が活躍できる人材育成
という3点に基づき持続可能で高収益なビジネスモデルを構築している。
以下、畔地氏の講演を一部抜粋しつつまとめます。
生き残りの道は高価格帯しかない
大手との価格競争に地域商社がコストメリットで勝てる由もない。また、価格競争に巻き込まれてしまっては、地域の一次産業に従事している人たちは食べていけない。生き残る道は高価格帯しかない。
「大きくて甘い栗」を数値化する
高価格帯で勝負するためにはまずは数値的根拠を元に、商品の魅力をPRしなければならない。栗を生産している地方に行くと必ず聞くんですよ。「ここの栗の魅力を教えてください」と。
すると、どこの地域の方も同じように口を揃えて「大きくて甘いんです。」と答えてくれる。では、大きくて甘いというのはどれくらい大きくて甘いんですか?と聞くと、だいたいの方が答えられない。
まずは全国平均を数値化して、この違いをはっきりさせてみる。調べればいいだけなんですが、多くの地方都市がこれをやっていない。僕らはやっている。この違いは大きい。
ちなみに、栗1粒の全国平均が20gに対して僕らの栗は25g。つまり一般的な栗と比べて25%以上大きい、糖度も同様に全国平均と比べてこれくらい違うと根拠を持って示している。
こうして商品の魅力を伝えられると、百貨店からも引き合いが出てくる。実際、伊勢丹と共同で開発した栗きんとんは桐箱入りの1粒で864円。3日間限定販売の360個が初日で完売しました。
10kgで2万円を実現した「かおり米」の発想
今玄米30kgっていくらですか?全国平均でいうと5,000円切っていますよね。そんななか、四万十のかおり米は10kg計算で2万円という高値で売れているんです。なぜか?
かおり米とは、ある農家さんの元で突然変異で出来たお米なんですが、これが普通のお米に少し混ぜて炊くといい香りがする。そこから、四万十のお土産用に80gを1袋に小分けしての販売を始めたんですが、これが手軽で持ち帰りやすい、配りやすいとよく売れる。お米を高価で売るために、こうした売り方もあります。
原価0円の新聞バッグがUSポールスミスで販売される
環境循環型のビジネスという点で言えば、新聞バッグという商品もあります。四万十ドラマが運営する道の駅ではこの新聞バッグを使っています。ビニール袋はどうしても欲しいと言われない限り出しません。元々はエコという方針と一人の折り紙が得意なおばあちゃんのスキルが相まって生まれたプロダクトですが、これはお土産としても販売しています。中サイズで200円。
しかしそれだけでは終わらず、ポールスミスが注目してくれてアメリカで販売されたこともあります。10ドルつまり約1000円で販売していましたが、これまでに計1万個輸出しています。読み終わった後の新聞を使えば材料の原価はほぼかかってません。
日本人にとって英字新聞がかっこよく見えるように、アメリカでは東洋のオリエンタルな文字がかっこよく見えたんですね。ちなみに新聞は高知新聞のものしか使っていません。
1泊2日3.5万円のインストラクター講座も開催
今では知名度も人気も出てきたので、新聞バッグのコンテストを開催したり、新聞バッグ作成のインストラクター講座(一泊二日で3.5万円)を開いたりもしています。
チームプレーが生む製品完成力
百貨店の顧客にも通用する商品企画をするために基本的にチームで動いています。生産者、デザイナー、流通業者が一丸となって企画開発を進めます。
デザイナーさんに関しては、一貫性のあるトータルデザインをするために、一人専属の方にずっと入ってもらいますし、月に一度東京のバイヤーさん向けにプレゼンする機会を設定したり、20年以上の歳月をかけて失敗も積み重ねながら、製品力を向上させ続けてきました。
まとめ 四万十ドラマは1日にしてならず
百貨店や通販カタログ等、外需獲得に向けた高付加価値商品の企画・開発事例が豊富な四万十ドラマでも、初期の頃は失敗が多かったと言います。その中で日々改良・改善し続ける中で、完成度の高い一流の地域産品を高確率で手がけられるようなノウハウを確率した四万十の人々。
昨今、地方創生が叫ばれていますが、今、地域が真に求めるべきは短期的なアクションはもとより、20年30年というスパンで地道に地域と併走していける人材の確保なのかもしれません。
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岩手県出身の86世代。2015年10月、東京から小林市へ地域おこし協力隊として移住。情報発信からの現地滞在、新たな人の流れを作るべく。メディアを育てつつ、ブックカフェ兼ゲストハウスというリアルな箱を準備中。