宮崎県小林市では私たち二人を含めて、現在11名の地域おこし協力隊が活動しています。(新たに4人募集中!)
一期生の4人は、今年の夏で3年間の任期を終了します。
企画制作に関わらせてもらっている、ケーブルテレビの番組「こばナビ」で、任期終了を間近に控えた先輩隊員を取材させてもらいました!
7月の放送に先駆けて、内容を一部こちらでもお届けします!
目次
地域との関わりから広がった定住への道
〜地域おこし協力隊の3年間とこれから〜
今回取材させてもらったのは、小林市地域おこし協力隊一期生の、瀬尾絵美さんと田地祐造さんのお二人です。
瀬尾さんと田地さんは東京生まれ東京育ち。
3年前、地域おこし協力隊として小林市に移住してきました。
お二人が野尻町(ケーブルテレビの放送エリアが小林市の中で野尻町のみなので、今回は野尻での活動にスポットを当てました)で特に関わりの深い方々を訪問しながら、3年間の軌跡とこれからについて紹介します!
地域活動の基盤となる出会い。
〜農家民泊とブルーベリー園の西山さん〜
最初に訪れたのは、農家民泊とブルーベリー園を営む西山さん。
着任したばかりのころ女性グループの会議で出会い、「今度うちに遊びにいらっしゃい」と声をかけてくれたことが最初のきっかけでした。
当時を振り返り、
「町の課題や問題について、農家民泊や放課後児童クラブなどの活動などいろんなお話を聞かせてもらって、右も左もわからないなか、いろんなことを教えてもらいました。
いろいろ考えてチャレンジし続けている姿を見て、刺激を受け、自分も頑張ろうといつも思うことができました」(田地さん)
「仕事の第一線を退き、主人とこれからどうしようか?と話していて。民泊をやりたいと言ったのは私。そこに民泊をやってみない?という話がタイミングよくきて、チャンスだと飛びつきました。
大変なこともあるけど、いろんな人との出会いが広がって、仲間ができて、やってよかったと思ってます」
と話す西山さん。
地元の人がチャレンジし、行動し続ける姿は、外から来てこれから何ができるか?と模索する二人を勇気づけました。
「本当にいつもすごく温かく迎えてくれて、ご飯をご馳走になったり、みかんをその場で絞ってジュースを作ってくれたり、こんにゃく作りを体験させてもらったり、
東京出身の私達にとって、全てが初めてで。
自然の恵みを暮らしの中に当たり前に取り入れている姿を見て、こういう生活をしたいなと思いました」(瀬尾さん)
「東京から若い人が来たと聞いて、すごく嬉しかった」
3年前、地域おこし協力隊が何者かまだまだ認知されていなかった中、西山さんは二人が来たことをとても喜び、二人を温かく迎えました。
二人は、西山さんが作っているブルーベリージャムのラベルデザインを作成したり、市外のイベントに出展しブルーベリージャムのPR販売をしたり、
「自分たちが協力できることは何だろう?」
と考えながら、様々な活動をしてきました。
子どもに食べさせたい体に優しいおやつ、emiesの原点
二児の母である瀬尾さんは「子どもに食べさせたい、体に優しいおやつ」をコンセプトにした、emiesというブランドを立ち上げ、イベントや小林市内のお店で販売しています。
「ここがemiesの原点といえる場所なんです」(瀬尾さん)
瀬尾さんがお菓子作りを始めた当初、西山さんの加工場を借りて作っていました。
西山さんの家で採れた、ブルーベリーや柚子を使ったスコーンやジャムを作ったり、
「最初のころは、一人だとできなくて田地さんにも手伝ってもらっていました」(瀬尾さん)
試行錯誤を繰り返してemiesは誕生したのです。
イベントなどでPRを続け、市外県外でも人気となったemies。
先日、自宅に専用の加工場が完成し、独立へ向けて歩みを進めています。
3年前は今の自分たちの姿を想像していなかった
「最近はなかなかゆっくり来られなくて、近くを通るたびに西山さんの顔が浮かんできて、ずっと会いにきたいと思っていました。
3年前は自分の工房を持てるなんて思いもしなかったし、今の自分たちの姿を想像していなかった。
応援してくれる人がいたから頑張ろうと思えました。
本当に感謝しかありません」(瀬尾さん)
「3年前を思い出して、いろんな思いがこみ上げてくる」
薄っすらと涙を浮かべた瀬尾さん。
「私もずっと二人のことが気になっていて。加工場も無事できて本当に良かった。
これからもずっと応援しているわ」
二人のことを見守る西山さんの温かい眼差し。
「ここが自分たちにとって原点となっている」(田地さん)
二人が小林市で生活し、地域活動をする上で基盤となる、なくてはならない大切な出会いだったんだと、
みなさんの話しから、表情から、その場を包む温かな空気から伝わって、胸が熱くなりました。
小林市の魅力を外にPRしたい!と思えた出会い
〜昭和35年から続く町の鍛冶屋さん、白坂鍛冶屋〜
続いて訪れたのは、小林市で唯一の鍛冶屋、白坂鍛冶屋さんです。
「野尻に鍛冶屋さんがあると聞いて、アポなしで突然おじゃましたんですが、快く迎えてくれて、いろんなお話を聞かせてもらいました」(田地さん)
「地域おこし協力隊、東京から来た、と聞いても最初はピンとこんかった」
と話す白坂さんですが、
二人を温かく優しく迎えてくれました。
「ピンとこなかったのに、そんな中でも優しく接してくれて、鍛冶屋の仕事のことはもちろん、昔の暮らしのこと、農機具のこと、白坂さんご自身のことなど、本当にいろなことを教えてもらいました」(田地さん)
イベントでPR。言葉から一つ一つ教えてもらった。
鍛冶屋さんの存在は知っていても、実際に仕事場を見たことは一度もなかった二人。
「白坂さんのお仕事に感動して、もっといろんな人に知らせたい!と思って、イベントでPR販売させてほしいとお願いしました。
包丁や農機具など、貴重な商品を快く貸してくださり、KCK(小林市地域おこし協力隊の略称)マーケットとしていろんなイベントに持っていきました」(田地さん)
2人はKCKマーケットを立ち上げ、白坂さんの商品のほか、小林市で採れた野菜や地元の方が作ってた加工品などを市外県外の様々なイベントでPR販売してきました。
PR販売する上で商品のことを知るため、多い時は毎週のように白坂さんを訪ね、
「用語や特徴、使い方など、一から教えてもらいました。用語の前に方言も教えてもらって(笑)何から何まで本当にいろんなことを学びました」(瀬尾さん)
「始めは知識が追いつかなくてイベントに出ても上手くお客さんに伝えられなかったのですが、1年くらいやり続けて、聞かれてもいないのに説明するくらい話せるようになりました」(田地さん)
「二人には品物を販売してもらって感謝しかないですよ。
こないだも鹿児島からお客さんがきて、イベントで販売しているのを見てそんときはお金を持ってないから買えなかったから、買いにきました、って言って、わざわざ来てくれよったよ」(白坂さん)
白坂さんの技術、想いが、二人を通して多くの人に届いていることを、白坂さんはとても嬉しそうに話していました。
取材のときも、作り途中の様々な商品の名前や使い方を教えてくれたり、
中学を出るまで勉強は嫌いで、仕事を始めてから文字を書く猛練習をした話などをユーモアを交えながら話してくれて、二人は夢中になって聞いていました。
鍛冶職人の仕事を体験させてもらう
取材のために包丁を作ってくれることになり、白坂さんのお仕事を間近で見学させてもらいました。
「やってみる?」
と、田地さんと瀬尾さんも挑戦。
同じ部屋にいるだけで、モクモクと煙と熱さが伝わってくるのですが、作業する場所は想像以上に熱いらしいです。
白坂さんの指導のもと、火にくべた包丁の刃を叩いて成形していきます。
ハンマーをまっすぐに振り下ろすのが難しいらしく、
白坂さんが叩く音と二人の音はやっぱり異なりました・・・!
最後は白坂さんが仕上げて、完成!!
「専門の鍛冶屋でなく町の鍛冶屋だからなんでもつくる」(白坂さん)
包丁や農機具のカスタマイズからメンテナンスまで、一人一人に細やかに対応し、昔ながらの伝統的な製法で丁寧に作る仕事のファンは多く、
市外、県外から多くのお客さんが白坂さんを訪ねてくるそうです。
技術はもちろん、「話すことも仕事のうちだから」と丁寧に説明してくれる白坂さんの話を聞きたいというファンも多い。
様々なメディアで取材もされ、日々忙しい中、いつも優しく丁寧に向き合ってくれて、仕事を心から愛し楽しみ力を注ぐ白坂さんの姿に、二人の心は動かされ、市外県外と駆け回り小林市をPRする原動力になっているのだなと感じました。
養蜂家を目指して小林市へ。
田地さんは、日本みつばちの可能性に興味を抱き、東京にいるときから勉強を始め、
3年前、養蜂家を目指して小林市へ移住しました。
市内各所に約40個の巣箱を設置し、収穫した日本みつばちの蜂蜜を、
イベントで田地さんセレクトスペシャリティコーヒーのトッピングとして提供するほか、
今後は販売もしていく予定です。
巣箱は、田地さんの活動を応援してくれる地元の方々のご自宅の山に置かせてもらっているそうです。
今回の取材でも収穫した蜂蜜をプレゼントし、「おいしい!」と喜んでもらえました。
地元食材の美味しさに感動。協力して商品開発!
地元さんの農産物で加工品を作り販売する、「野尻農産加工センター さとび」。
二人は、地元で採れた作物を使って商品開発を一緒にするなど
「一時期は毎日のように通っていました」。
「なんでこんなにあったかいんだろうと思うくらい、みなさん優しくしてくれて、子どもたちのこともいつも気にかけてくれたり、忘年会にも呼んでいただいたり、
可愛がってもらっています。
地元のお母さんたちと接することができて嬉しかったです。」(瀬尾さん)
仕事での関係だけに留まらず、今でも深い繋がりが続いています。
「会いたい人がいる」それが「ふるさと」になる
今回取材で訪問したところは、ほんの一部ではありますが、お二人の3年間を凝縮して見せてもらったようで、
二人が人との出会い・繋がりを大切に育み、
一つ一つ紡がれて、地域の方々の想いと二人の想い・行動が重なって
「3年前は想像できなかった」
新たな道を生み出しているのだと感じました。
「ここからがスタート」
そう話す二人の道は、もちろんここがゴールではなく始まり。
「会いたい人がいる」
そして「住み続けたい」と思う、
二人にとって小林市は「ふるさと」になっていくんだなと思いました。
取材の内容は(限定された地域のみの放送ですが・・・)下記日程で放送されます!
BTVケーブルテレビ「こばナビ」
2016年7月2日(土)初回放送
毎週水・土・日 17:40〜、22:40〜の10分間
7月中ずっと放送!
お近くの方はぜひご覧ください!
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日刊繋ぎ屋マガジン(平日毎日更新)
繋ぎ屋オススメ本のまとめ
Tsunagiya Library
北海道函館出身の86世代。自然の中で食・住・ナリワイを創る暮らし目指して、2015年9月26日から夫婦で東京から宮崎県小林市野尻町へ移住。広告営業、地域情報誌の記者編集、広報などを経て、現在は地域おこし協力隊&聞き書きライターとして活動中。
広報PRの仕事や聞き書き本の制作・ハーブを中心とした畑づくりをしながら、移動式古書カフェ・ゲストハウスオープンへ向けて準備中です。